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クリスチャン・ルブタン「レッドソールハイヒール」事件経過報告

ルブタン側の、特許庁の審査での拒絶査定を不服とする審判請求を却下する審決が出た。この審決により、ルブタン側の「レッドソールハイヒール」商標登録の試みは、日本特許庁段階では最終的に容認されなかったことになる

ルブタン側の、特許庁の審査での拒絶査定を不服とする審判請求を却下する審決が出た。この審決により、ルブタン側の「レッドソールハイヒール」商標登録の試みは、日本特許庁段階では最終的に容認されなかったことになる。クリスチャン・ルブタン「レッドソールハイヒール

私見であるが、本事件の審査及び審判の経緯からすると、「商標登録の失敗」の背景は、ルブタン側が、欧米において「レッドソールハイヒール」が商標登録されているため日本でも同様に登録されるであろう、という予想の下に、欧米における「クリスチャン・ルブタン」の知名度に依拠しすぎ、「日本において、レッドソールハイヒールはクリスチャンルブタンである」という事実を日本特許庁に対して充商標実務上で十分に立証できなかった点にある、と思われる。

特に、ルブタン側が、販売手法として、あえて、雑誌、新聞、テレビ等のマスコミ、ウェブにおける積極的な広告を行わず、海外又は日本国内のセレブによりルブタンの「レッドソールハイヒール」が使用されていることがマスコミにおいて報道されていることにより十分に日本においても知名度があると判断し、あえて積極的な広告を行わず、第三者であるマスコミによる記事報道のみを販売戦略とする、というマーケティング手法を取ったことが、根本的な要因である。

日本特許庁、裁判所における商標の周知性の立証においては、広告投資費用、広告手法、広告回数の立証が非常に有効であるが、本事件の審決文を読む限り、上記販売戦略の結果として、ルブタン側は今回の事件で広告実績を具体的証拠を以て立証できなかった点がこの審決につながったものと判断される。

審決取消訴訟の提起期限は10月である。もし、ルブタン側が本審決を不服として訴訟を提起する場合には、この訴訟は、知的財産高等裁判所(東京高裁)に係属することとなる。今までの経緯からして、ルブタン側は日本における権利化を図ろうとすることが予想され、訴訟提起はほぼ確実であろうと思われる。この訴訟の被告は日本特許庁になる。

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By Takaaki Kimura

Managing Partner and Patent Attorney with over thirty-five years of IP law experience.